エタノールの生んだナンセンス


エタノールの効果を

はじめて見出した人間は

どんな気持ちだったのだろう

リスクなしに快感はない

時には

危険な思想を飲んでみたまえ


一匹のライオンが

毎日千頭のシマウマを

食べるわけでもないのに殺していたら

ひくよね

ひょっとして

今の人間は

それと同じようなことをしてるんじゃないか

無知による働きすぎは

悪である

勤勉が善であるという時代は

終わった

そろそろ

旧来の善悪観をアップデートする時代に

さしかかっている

没落していく民族が まず最初に失うのは節度である

という アーダルベルトシュティフターの洞察は

正しいと私は思う

生き物の体は

すべての分子の調和の上に成り立っている

自分が地球という生き物の一部だと認識すること

これからの人間には

そういうセンスが問われる

それがわからない者は

淘汰される

節度を持ち給え

エゴで動く時代は

もう終わっている

大阪のあのやかましい看板を思い出して見給え

二十世紀がいかにエゴの時代であったのかが

わかるだろう

これがダサいと感じられる感性を持った人は

これから輝く

若者

君の瑞々しい感性を

旧来の資本主義の毒で

麻痺させるな

我々は

新しい生命観 倫理観を築く

自分が 文明を創るのだという

自覚を持て



ちょうちょは

自分のアイデンティティ

何により担保しているのか

親や先祖 こどもということの

意味がわかるのだろうか

幼虫からさなぎになり

蝶になる過程で

同じ私でいられるのだろうか

いざとなったら

自分の積み上げてきたものを

全て捨てさってもいい

そんな

幼虫から蝶になるようなことがありうるという

感性を養え

固執は時に 見苦しい

大地に根をはった大木が

突然宇宙空間に向かって

飛び立つことがあってもいい


かまきりは

冬という季節の存在を

知っているのだろうか

世代間の重複がなければ

おそらく文化は継承されない

人間も

知らない季節があるのかもしれない

誰が連続であることを保障できるのだ


かまきりは

生まれてから死ぬまで

ずっとひとりぼっちだね

もし君が

生れ落ちてずっとひとりであったなら

世界はどのように見えるのだろうね


因果関係を考えるというのは

人間の脳のくせなんだろうね

科学も仏陀への道も

その上に成り立っている

今の人間の脳のあり様ありきでの話

因果でないとは

なんだろうね

ロジックの外は

ナンセンスだと言う

そちら側に回らないと

ロジックのなんたるかは

わからないのだろうね

道路にたたずむかまきりを見て

彼の生の危うさを思う

我々から見ればそんな危険なところに立ち入るのは

自殺行為である

けれども

人間の認知とは異なる認知がそこにはある

我々の振る舞いも

他の認知から見れば

同じような危うさを持っているのだろう

あわれなる我ら

ロジックの手のひらで

大いに踊れ

踊りつかれたとき

進化が始まるだろう


世の中は

わからないことで

満ちあふれているようだね



(2007年10月20日深夜エタノールに溺れつつ)