星月夜


地球上で最も真面目な場所
イラク
日本人青年の首が切られた
手を縛られて
どうすることもできない
ゴツゴツした刃物の冷たい感触を感じるまでの間
息の詰まる生の濃縮
私の知っていた悲しみや恐怖という感情が
偽物であったことを知った


噴水のごとき血しぶきを見てしまった直後
ふらふらになりながら
バイクで夜道を走った
星月夜に浮かぶ
一つの弱々しくやわらかい光を見つめていて
地球のカーブが異様なまでにきつくなるのを感じた
地球の回転スピードを肌で感じた
私の中に
熱い塊が生まれた


地球は狭い
インターネットが
地球を縮め 逃げ場がなくなった
うかつに歩くと後遺症の残る事故に遭うということを知った


人の命は誰がなんと言おうと尊い
人だけじゃない
植物も動物も
みんな尊い
この一点だけは
絶対に譲る気はない
真面目の行使はこの一点だけでいい


星を見つめるがごとき反戦の思いは尊い
けれども
ナイーブな主張に終始するだけではダメだと悟った
だから
経験主義的に生物集団の振る舞いを理解することを
固く決意した