むかしむかし、たろうは、深夜、喫茶店で本を読んでおりました。
しばらくして、たろうのとなりに三人ぐみが座りました。おじいさんと、若い男と若い女でした。
若い女は、みんなの分の水をくんだり、おじいさんの飲み物と食べ物を注文したり、おじいさんの欲しがるものを、おじいさんが口にする前に、すばやく察知して渡したりと、それはそれは気の利く人でした。
若い男は、ずっとだまって座っておりました。
そのときです。突然、おじいさんが
「まいったまいったマイケルジャークソン!」
と、それはそれは大きな声で、言い放ったのです。
そのお店にいたお客さん全員の動きを止めてしまうほどの、破壊力でした。もちろん、たろうもケーオー寸前になりました。
ところが、女は、そんなことは慣れっことでもいわんばかりに、平然と、
「なんですか?それは。」
と、愛想よく、しかし、軽やかにステップを踏んでかわしました。
しばらくして、おじいさんが、今度は、
「困った困ったこまどり姉妹!」
間髪いれずに、
「ダンケシェーン!」
と、それはそれは大きな大きな声で、しかも、今度は、ジェスチャーつきで言い放ちました。
そのとき、冷たいモノが、たろうの体をつきぬけていきました。
たろうは、すぐさま
「ごちそうさまでした。」
と珈琲カップを返却すると、鶴になり、空に舞い上がり、山の方に飛んで行ってしまいました。
おわり